--- 本を書く!前に、心得ておくこととは ---

 

書き手と読み手の無知の知

本を書くということは、自分の「伝えたい」ことを表現するひとつの方法といえます。本を書く際には、書き手に対して読み手、内容を講演する際には、話し手に対しては聞き手という関係性があります。

他人は、自分の知らない事柄を習得するために、読み手、聞き手になり、感動します。このため、他人が知らない事柄(または、さらに深い事柄)について、わかりやすく書いて理解してもらわなければ、何の感動も与える事はできないでしょう。

分かってもらうためには、まず初めに、すでに他の人によって明らかにされている「周知の事実」を調べ、これを参考に自分の「既知の内容」を説明していくことが必要です。さらに最後に次の課題として、自分も他人も知らない「未知の事柄」を上げる事によって、その方向性を明示。自分への理解を深めてもらうことができます。

他人が知っていて、自分が知らないことを「無知」といいますが、ソクラテスの「無知の知」のたとえのように、知識の深度により、その「無知」の考え方は変わってきます。知らないからと言って、自分または他人が「無知」であると考えるのは、決して正しい見方とは言えません。

         ● 読み手  「わたしは、詳しく知らなかったので、あなたの本を読みました。」 

         ● 書き手  「そうでしたか。わたしの本で、ご理解いただけましたか?」

         ● 読み手  「あー、その程度のことならば、知っていました。」  

 よく聞かれる批評

本を書き始めると、人にいろいろ聞きたくなってきます。例えば、会社の人たちに職場の環境を、学校の先生に専門的な話を、親戚のおばあちゃんに昔の話を、という具合に。しかし、書いているうちに、だんだん内容が複雑になり、まとめて誰かにみせると、以下のような容赦のない批判が、津波のように押し寄せます。

でも、最初は、これがあたりまえなのです。もし、出来がよかったとしても、一度は自己批判すべきでしょう。個人的見解の相違はあるものの、わたしにとって、一番厳しい文言は、「それで、何が言いたいわけ?」です。それが書いてあるのに、伝わらないもどかしさ。もっとも、その批判の言葉さえ出てこない状況が、一番悪い状態といえますが。。。

 

 内容に関する注意点

1.起承転結でまとめる:書き手も読み手も訴求点が絞れ、理解しやすくなる

2.個性を出すユニークなアイデアを明確にする(他人には未知、自分は既知)

3.引用先の明記:先人の著作権に配慮孫引きは避ける

4.参考文献:巻末に文献を羅列するしつつ、影響のあった部分を明記すべし。

 

 本を書く際の心得

 

ギリシャ神話に登場するシシュポスは、地獄での役務として、大きな岩を山の頂上まで運びことになります。しかし、頂上にあげたとたん、その大岩はふたたび転がって、谷底に落とされてしまうのです。シシュポスは、意味もなく、また大岩を頂上まで運びますが、その役務は永遠に繰り返されることになります。

 

「なぜ、その本を書くのか」を問い詰めていくことで、よりよい著書を出版することができるでしょう。 

 

 by 長谷部裕治(知識考房 代表)


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